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みぢかClip.

ありふれ雑記です。

Clip.017 なにがあるの

 本を読んでいるとき、ネットで興味深い記事に巡り会ったとき、ゲームをしているときなどは外界の音が【聞こえているけどただの音にしか聞こえていない】状態になる。
 この、ただの音状態になっているのがBGMならそれほど問題ないしむしろ理想的とも云えるけれど、それが妻との会話だったりすると後から思いもかけない厄災を呼ぶことがある。実際若い頃はよくもめた。(正しくはろくに話を聞いていない僕が妻ことハルから一歩的にとっちめられていた)
 しかし近年、僕は長年の訓練により、妻から投げかけられた言葉に対し【全く話の内容は頭に入っていないけれど一見ちゃんと会話をしているように見えるような応答を口から出す】と云う画期的な技術を身につけ、妻との摩擦を減らすことに成功した。
 必要は発明の母である。
 こうした表現をすると世の女性達から激しく顰蹙を買うであろう事は承知で申し上げると、ハルから僕に向けて発信される会話の9割5分ぐらいは心底どうでもいい話であり、いかにも聞こえている風な相づちを応答し続けることによって丸く収まるのだ。
 必要なのは生体相槌マシンであって、僕が話を理解しているかどうかは本質的には重要でない。

 さて、とある休日の正午過ぎ。遅い寝起きでげんなりしていた胃袋が空腹を訴え始める時間だ。僕の部屋でフリーセルに興じていたハルが話しかけてくる。
「そろそろお腹空かない?」
「あ、空いたかな」
「お昼何食べる?」
「なにがあるの」
「昨日のカレーの残りを暖めるか、インスタントラーメンか、あとはチャーハンなら作れるかなあ」
「そっか」
 数分後。新たに始めたフリーセルのゲームを終えたハルが再度僕に尋ねる。
「お腹空いてないの?」
「あ、空いたかな」
「何食べる?」
「なにがあるの」
「だからあ、カレーの残りかインスタントラーメンか、チャーハン」
「そっか」
 注目するべきは、このとき僕の頭の中にはハルの発言が一切入っていないことだ。
 さらに数分後、手詰まりでゲームオーバーになったフリーセルの画面を恨めしげに見つめながらハルが再々度僕に尋ねる。
「ねえ、お腹空いてないの?」
「あ、空いたかな」
「何食べるか決めて」
「なにがあるの」
「ちょっと! 人の話聞いてるの?」
 とうとうハルがプチ切れた。
 声の調子が変わったのに気づいた僕が向き直ると、ハルが般若の2歩手前ぐらいな形相で僕を見ている。
「なに怒ってんだ」
(先の2回の会話が記憶にないから、僕としては急にキレられたように見えている)
「あのね……」
 例によってハルにとっちめられつつ、便利な道具も過信は禁物と云う教訓を学んだ僕であった。
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  1. 2010/08/11(水) 22:11:22|
  2. Clip

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