門前の小僧習わぬ経を読む、ではないが、無意識のうちに周囲の所作からものを学ぶことはよくある話のようだ。スポーツや勉強や仕事なんかで、レベルの高い集団にいると感化されて自分の水準が引き上げられるなんてのもそうだ。単純に環境だけで人が育つとは言い切らないが、環境【も】人を育てる、ぐらいのことを言ってもそれほど的外れではないような気がする。
さて、汚職や収賄のニュースの後で桜の開花速報が流れるぐらい話は変わるが、僕は食事のペースが奇妙に速い。も少し詳しく説明すると、1回の食事量は人並みだが、食事完了までが早い。
より具体的には、12時のチャイムと同時におかずの品目をTwitterにPostしながら弁当を食べ始めて、12時6分には食事が終わってる程度に早い。
この話をすると『よく噛んで食べなさいよ』と人から(女の人だと皆が皆その瞬間だけは僕のお母さんみたいな口ぶりで)注意を受けることが多いのだけど、馬鹿を云っちゃいけない。僕は給食の教科書に載ってもいいぐらいよく噛んで弁当を食べている。文科省で給食の教科書を認定する日が来たら出版会社からオファーを受けてもいいぐらいだ。
食事の早さは、無駄な時間を過ごすことの多い僕の人生にとって非常に数少ない時間短縮の機会なのでこのラインを譲るわけにはいかない。
ある日のこと。
その日も僕は風のように夕飯を食べ、グラスに入ったウーロン茶をぐっと飲み干すと自室に引っ込もうとしてやや腰を上げかけた。『子供達が食べ終わるまで座ってられないの?』と云う妻ことハルの小言はいつものことだ。
で、何をどうして皆さんはそんなに食事が遅いのですか、と思いつつふと隣を見ると、娘ことナツの茶碗が空になっている。
あれ、ナツ、もう夕飯食べ終わったの。
「うん」
何か急いで食べたい理由でもあったの。
「え、べつに、ふつう」
なんてことだ。僕の食事ペースの早さはよりにもよって娘に伝染していた。
子供は親の背を見て育つとは云うけれど、そんな背中は見ないでいい。
ご飯はよく噛んで食べなさい。
……お父さんも落ち着いて食べるから。
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- 2010/10/22(金) 20:07:04|
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